ワンダフル・ライフ―バージェス頁岩と生物進化の物語

6月 18th, 2004 Categories: コンピュータ及び科学全般ネタ

渡辺千賀さんのIn the Blink of an Eye(カンブリア紀の謎)というブログを読んで、私も昔読んだワンダフル・ライフという本を思い出しました。

カンブリア紀の海を泳いでいた不思議生物の話しには驚かせられましたし、内臓まで描いた化石の3次元図はとても興味あるものでした。そして更に刺激的な事が書いてありました。

単細胞生物から魚類、哺乳類、霊長類を経て人間に至る進化論のイラストを、あなたも何処かで見たことがあるでしょう。人間は最も優れた生物であったゆえに、適者生存の競争に勝利して、生物界の頂点に君臨する事ができたという考え方です。

ところがこの本の著者であるStephen Jay Gouldは、カンブリア紀から現代までの間に起こった何回もの大量絶滅から生き残った生物達を、ただの偶然であると言い切っています。

海中生物の9割以上が絶滅したといわれるペルム紀の大量絶滅を含めて、カンブリア紀から現在までの間に5回の地球的大量絶滅があったと言われています。このように全地球規模の大量絶命が起こっているときには、生き残った生物と死に絶えた生物の差は、よく言えば運不運、悪く言えば単なる偶然の結果でしかないそうです。

そして大量絶滅の直後に、生き残った僅かの生物から爆発的な種の変化(進化)が生まれました。そのような事の繰り返しの果てに、現在の生き物と人間が居るという事らしいです。

このアイデアとコンピュータ業界の生存競争の歴史には、ある種の共通点があるように思われます。

優れた製品が、常にマーケットで生き残ってきただろうか?という事を考えれば、なんとなく話しのオチが見えてきますね。

いま勝ち組にいるマイクロソフトのWindowsやOffice、オラクルのデータベース、Sunのワークステーション、Dellのパソコン、Ciscoのルーター、Nokiaの携帯電話。勝者の歴史を商品の優越性で説明する事は簡単です。しかし違うような気もします。MS DOSとCP/Mを比べれば、CP/Mの方が優れていました。Windows 3.1とOS2を比べて、Windows3.1の機能が勝っているという人は少ないでしょう。MS Wordのどこが、市場シェアの差を説明できるほど一太郎より勝っているでしょうか。あっても僅かなものです。

パソコン業界の生存競争も、勝負している製品の優越性だけでは決まらないんですね。マーケットが受け入れるかどうか、これはやってみなければわかりません。飛ぶ鳥を気合で落すマイクロソフトでさえ、全戦全勝ではありません。MSN、MS Access、MS Foxpro、他にも例はあるはずですが思い出せません。

それぞれの企業は、他社と競合製品に勝つために様々な戦略を練り、戦術を実行する事で生き残ろうと努力します。しかし、この世には必ず勝てる戦略も戦術もありません。勝つか負けるかは、結果を見るまではわかりません。

短期タームで考えた場合、企業や製品に明らかな優劣があれば、劣った者は退出させられます。そのような短期的競争の結果、優劣のつかない競争相手がいくつか生き残り、長期的なバトルモードに入るでしょう。

長期的なタームで考えた場合、最後にどの企業や商品が生き残るかは、その企業や商品がどれだけ優れているかではなく、マーケットという戦場で積み重ねられる一つ一つの偶然が累積した結果ではないか、というのも一つの考え方ではないかと思います。

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