経営をしない経営者

中国で操業している日系工場を観察する事で、日本社会の縮図が見えてきます。日本人管理者や技術者の作った組織や指示が、現地社員との文化摩擦を起こす事により、日本文化の特性が浮かび上がり、何が中国(合理主義的思考が情緒的思考に勝る民族)と異なるのかがわかります。最近、このような経験を通じて、日本人経営がいかに経営をしないかがわかって興味深い。

昨年から今年にかけて、お客様の工場で事務員と工員の大量解雇がありました。昨年夏頃との比較で、社員数が半分以下になった会社を多くみました。ところがこの数ヶ月間、中国国内販売を対象としている業種では、受注量が急速に増大しているようです。そういう会社の中で、不況時の(事務系)少人数組織に最適化された運用を維持しながら、注文増に対応しようとしている経営者が見受けられます。このような経営者は、人を増やさない事が経営努力だと考えているようです。

組織を形成している部門は、それぞれの部門の入出力結果に責任を負わなければなりません。責任の所在が明確でない組織は、管理者も末端も、結果さえ良ければ、運用ルールを重視しなくなります。そのような状況で注文増で事務処理件数が増大すると、末端が作成する伝票の精度が低下して、その伝票をもとにした業務システム事態の信頼性が低下してゆきます。

その結果は、一時的に利益が増大するものの、すぐに業務システムに混乱が生じ、どの在庫数量を信用して良いかわからなくなり、常に欠品が生じて製造効率が低下し、品質と納期が守れなくなって経営危機を迎える事になります。このような危機的状況においても、日本人の特性として、現場を預かる日本人管理者の優れた現場調整力によって問題解決を図るので、間違った経営を行う会社においても、危機的状況は表面化せずに沈静しています。

では、上記のようなケースにおいて、経営者はどのような経営努力をすべきなのでしょうか。私に言える事は、正常な業務処理に必要な最低限の会社組織を正しく保つ事は経営者の責任です。その上で、少なくとも経費に見合う利益を確保するのが経営者の仕事ではないでしょうか。それは具体的にどのような事なのか?それを考えるのが経営者の仕事です。

追伸:
上記は、整理解雇を否定するものではありません。需要(生産量)に応じて製造や事務の人数を調整する事は合理的な判断です。しかしながら利益の減少を補う為に、適正な能力を維持できないほど組織を小さくする事は合理的な判断ではありません。

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