Archive for March, 2014

クリミアが選んだ道

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中国の深圳は、今週から暖かくなり、ダウンジャケットをやっと脱ぐことができるようになりました。若干冷房の入った高速バスに揺られながらこの記事を書いています。先週月曜にクリミアで国民投票があり、ウクライナからの独立とロシアへの編入が決まりました。その前にウクライナに正義なしという記事を書いた時には、ロシアはクリミアを独立させるだけで編入はしないだろうとの見通しを持っていましたが、見事に予測を外しました。予測を外した人は私だけではなかったと思います。私自身について言えば、予測は外した理由は、クリミアの置かれた政治的状況にばかり注目し、経済状況のフォローを怠った為です。以下、後追い的に私なりの分析をまとめてみましたのでご参照ください。

1)クリミア半島のインフラ供給問題。
クリミア半島のほとんどが砂漠で、電気・ガス・水といった生活に必須のインフラはすべて、ウクライナ側から供給されています。今回のように強引な方法でウクライナから独立した場合、ウクライナ側は当然のように元栓を占めるぞと脅してくるでしょう。下手をすれば実行されかねません。ウクライナから非友好的に独立する場合には、電気・ガス・水を供給してくれる別のスポンサーが必要になります。つまりウクライナ自治共和国は単独で独立状態を維持する事がそもそも困難なのでした。

2)国民投票では過半数のウクライナ人も「賛成」にまわった。
国民投票の投票率は82.71%で賛成は95.5%でした。クリミアの人種別人口比率は、ロシア人が58%、ウクライナ人が24%、クリミア・タミール人が12%、その他が6%。タタール人全員が棄権したとすると、投票率と賛成票から逆算して、過半数のウクライナ人がウクライナからの独立とロシアへの編入に賛成した事になります。独立とロシア編入は、ロシア人の賛成だけではなかったという事です。

3)ウクライナの経済は破綻している。
ウクライナ(キエフ)政府では、歴代大統領も首相も最高評議会議員も、みんなが国家の金で私腹を肥やしています。もともとウクライナで大規模デモが発生したのも、政治的権力者が国家の金を私物化する一方で、市民の生活が豊かにならない事に対する抗議の意味がおおきかったようです。その一方で、隣国のロシアではクリミアの何倍もの収入を得ています。

4)クリミアのロシア併合は経済問題。
下記はクリミアとロシアの収入や年金などの比較です。ロシアがクリミア新政権を通して流布させた情報かと推測しますが、ウクライナ人を含む、多くのクリミア住民を説得する材料としては極めて有効であったと思われます。

・平均月収:ロシア=6万3,700円、クリミア=2万7,700円。
・年金:ロシア=2万4,700円/月、クリミア=1万4,100円/月。
・医療:ロシア=病院建設、医療機器などの医療財政は国家が100%負担、
    ウクライナ=政府が60%、国民が40%負担。
「暮らしてゆけない」 人々は豊かなロシアを選んだ より)

要約すると、クリミアは単独国家として独立を維持する事はそもそも困難な地理的・経済的状況でした。ジャスミン革命が叫ばれた中東で、経済問題から政変へ発展した国々とクリミアの独立とは、本質的にあまり変わらなかった。しかしクリミア住民は、単に政府のクビをすげ替えるのではなく、隣国ロシアへ併合の道を選ぶ事で、自分たちの将来の経済的リスクをより小さくする道を選んだという事だと考えられます。

逆に、ユーロ圏へ接近を選択したキエフ新政権のウクライナが、今後、エジプトやシリアの二の舞いにならないように願ってやみません。

参考文献:
1)クリミアの国民投票結果
2)クリミア自治共和国
3)クリミア半島の歴史と現状
4)ウクライナからクリミアへの電力供給を制限
5)「日本のウクライナ支援1500億円」は東電に金を注ぐようなもの
6)ウクライナ人が語るウクライナ情勢 – 東西問題より深い政治腐敗


3 comments - What do you think?  Posted by bobby - 2014/03/27 at 11:26

Categories: 1.政治・経済   Tags:

ウクライナに正義無し

米国は欧州を巻き込んでクリミアへ介入しているロシアへ経済制裁を発動しようとしています。一般には、米によるロシアとクリミアへの抗議が「正義」であり、クリミアへ軍事介入しているロシアが悪者扱いされているように見受けられますが、それは正しいのでしょうか。私はどうも、そうではないように感じられます。以下に、いくつかの点について考えてみました。

1)新政府は合法か?
ウクライナ最高議会は、政府転覆後に大統領の解任とオレクサンドル・トゥルチノフ氏の大統領代行を決議し、そしてアーセニー・ヤツェニュク首相を選んだ。しかしながら憲法上は、最高議会による大統領解任は憲法違反ではないか。2010年の大統領選挙(国民投票)で民主的に選ばれたヴィクトル・ヤヌコーヴィチ大統領は辞任しておらず、憲法上は今も大統領であると言える。そのヤヌコーヴィチ大統領はヤツェニュク首相を選んでいないので、新政権も違法といえる。

同時に、クリミア首相であるアナトリイ・モヒリオフ氏の罷免と、セルゲイ・アクショノフ氏の新首相の任命のやり方は必ずしも民主的とはいえない。更にウクライナ大統領の同意を得ていない為に憲法違反である。(ロシアに逃れたヤヌコーヴィチ大統領が承認すれば、形式的には合法となるかもしれない。)

このようにウクライナには、いまのところ既存の憲法に合致した政権は一つも存在しない。

2)クリミアの国民投票は違法か?
ウクライナ新政権は、国民投票はウクライナ全体で行われるべきであり、クリミア独自の国民投票は憲法違反であり無効であると「正論」を述べてる。しかしながら、そもそもウクライナ新政権は暴力的革命によって成立した政権であり、新政権自体が憲法違反であるので、ウクライナ新政権の主張を「正当」たらしめる根拠が無い。それにもかかわらず、仮に欧米がウクライナ新政権を合法と認めるなら、それは既存のウクライナ憲法を無視する事であり、その基準の延長線上で考えれば、クリミア新政権によるクリミア独自の国民投票も憲法上は違法であるが認めるべきである。

3)デモ隊を銃撃したのは誰か?
キエフの独立広場でデモ隊に発砲して多数の死者を出したのは、内務部隊の中の特殊部隊であるベルクートと言われている。しかしながらロシアにいるヤヌコーヴィチ大統領は、発砲はナショナリストの武装集団であると非難している。騒乱の最中の事であり、どちらの側にもデモ隊を銃撃する合理性がある以上、客観的な証拠が示されるまでは、新政権の言葉もヤヌコーヴィチ大統領の言葉も信用に足るとはいえない。(現状では、それが可能とも思えない)

4)ウクライナ政府を転覆させたのは誰か?
ヤヌコーヴィチ政府を転覆させたのは、直接的にはネオナチを含む民族主義者の集団だと言われている。しかしながら実行者へ資金や武器を提供するスポンサーが必要である。

ロシアがウクライナを自国の影響下に留めて置くために、表から裏から、内政干渉を行ってきた事は明白である。現在の状況だけを見ると、ロシアがクリミアを手中に収める為に画策したように見えないこともないが、ヤヌコーヴィチ政権はロシア寄りであったので、わざわざその政府を暴力で転覆させ、国際的な非難を受けてまで行うに足る十分なメリットがあったとは思えない。

一方、ネオコンの代表論者であるロバート・ケーガンの妻で、2013年2月まで米国務省報道官を務めていたビクトリア・ヌーランド(ロシア系)が、昨年末にキエフの中心街の広場で、反政府運動の参加者にクッキーを配っているところを写真に撮られ、米国がウクライナの政権転覆を支援する内政干渉をしているとロシア首相に批判されている。また、米政府はウクライナが外貨準備として持っていた40トンの金塊を、真政権樹立後に、米連銀に預けると言って持ち去ったという噂がある。前回のオレンジ革命の時にも、米国による介入があったと言われている。

要するに、誰が支援したかという証拠は無く、真相は藪の中である。

5)ロシア軍のクリミア介入は悪か?
クリミアはロシア系の住民が6割を占める。キエフの政府転覆後も平和な状況が維持されたクリミアにとって、暴力的な民族主義者が武器を持って流入する事はなんとしても避けたいと考える事を、誰が非難できるだろう。ロシアのやり方はかなり強引であるが、結果として市民の平和が保たれ、治安が維持されている事は事実である。重要なのは制度としての民主主義と、市民の生命財産が守られる事ではないだろうか。

結論。

ウクライナのどこにも正義は見当たらないが、ウクライナ最高議会が憲法を無視してトゥルチノフ氏の大統領代行を選出した事を欧米が受け入れるのであれば、クリミア議会が憲法を無視してアクショノフ首相を新たに任命し、クリミアだけで国民投票する事を欧米が受け入れないのは、絵に描いたようなダブルスタンダードではないでしょうか。キエフで行われている事を民主主義と言うのであれば、クリミアで行われている事も同じく民主主義と認めるべきだと考えます。

参考文献:
1)ロシアが本格的軍事介入へ、今後のカギを握るウクライナの親ロシア勢力
2)クリミア半島奪取でロシアの得た勘定と失った感情
3)Leaked call raises questions about who was behind sniper attacks in Ukraine
4)Is the U.S. Backing Neo-Nazis in Ukraine?
5)USAID Support for Destabilisation of Russia
6)Ukraine’s gold reserves sent to NY Federal Reserve

4 comments - What do you think?  Posted by bobby - 2014/03/15 at 15:39

Categories: 1.政治・経済   Tags:

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