Archive for December, 2010

なぜ領土紛争は国民を熱くするか

<スポンサーリンク>


人間というのは自分の土地に対して強烈な所有欲を有しているようです。多くの人間が集まった国家というのは、更に強烈な領土欲を持っているようです。自分が所有している訳でもない辺境のゴミのような島に対して、なぜ国民は強い執着を持っているのでしょうか。

私のおじさんは若い頃に東京へ出て電気屋をしていましたが、田舎に残る親類の勧めもあり、70歳を越えてから故郷の町に帰ってきました。おじさんが住む土地として選んだのは、自分が生まれ育った家があった土地で、少なくとも40年以上は草ぼうぼうの荒地でした。

荒地は整地されて、きれいな家が建ちました。そこでおじさんの家には、お祝いの為に親戚一同が集まってきました。そのほとんどは70歳を越える老人で、その土地にまだ家が建っていた頃に、ここで育ったおじさんの兄弟たちでした。

おじさんは自慢の家の隅々まで案内する為に、みんなを連れて庭をぐるっと一周しました。その時、あるおばさんが不審な声で言いました。

「あの井戸が動いている!」

むかしこの家の庭には井戸がありました。その井戸は、隣の家の境界線から2メートル以上離れていたとの事ですが、今見ると、井戸は隣の家のすぐ傍にあります。次に、誰かが言いました。

「井戸が動くわけはないだろう」

そうです。この話は「日本むかし話」とは違いますから、井戸に足が生えて夜中に自分で動くというオチはありません。当然の帰結として、その日からおじさんと隣家の家主との間で境界線紛争が勃発しました。

何度か話し合いがもたれました。隣家の家主は、おじさんの父親や母親(とっくに鬼籍に入っている)の名前を出して、口約束だが「使って良いと言った」と主張します。あまりに死んだ人の名前ばかりを出すので、別のおばさんが提案しました。

「それじゃ、イタコを呼んで来て、本人に聞いてみよう」

一同大爆笑しましたが、それで和解できる筈もありません。こじれた境界線紛争は、どうやら次世代に持ち越されてしまうようです。(*)

個々の人間でも、土地に対する執着はなみなみならぬものがあるようです。これが国家となったらどうなるでしょうか。日本は韓国とは竹島、ロシアとは北方領土、中国とは尖閣諸島で領土問題を抱えています。政府が領土問題を解決する為に妥協案を出せない・呑めない主な理由はおそらく、たとえ誰も住んでいない辺境のゴミのように小さな島であっても、他国から削られる事は1ミリたりとも我慢できない、という国民感情がある為だと推測します。

たとえば尖閣諸島の問題では、経済的妥協案に反対する方の意見を、もともと我々の領土という愚のコメント欄で沢山頂きました。それらの多くは、中東に匹敵する油田があるとか、潜水艦基地ができるとか、シーレーンが危ないとか、次は沖縄が取られるとか、誇大妄想的な意見が多かったと感じています。そういう根拠を真面目に主張する方が多いという事が、領土問題が人間の心理に与える強い影響を物語っているようです。

*「おじさんの境界線紛争」は、領土問題の前フリとして考えたネタなので、現実世界とは関係ありません。

*この記事はアゴラと同時に投稿してます。


Be the first to comment - What do you think?  Posted by bobby - 2010/12/24 at 22:30

Categories: 1.政治・経済, 3.中国ネタ   Tags:

もともと我国の領土という愚

根津修二氏が尖閣諸島と北方領土について、「もともと我国の領土」とか「我国の権利」などという主張は”お互い様”と述べましたが、私も同意します。人類が出現する前から地球の陸と海は存在しており、もともとどこかの国の領土であった土地はどこにも有りません。

ある土地に視点を固定して、5000年くらいの過去から現在へと時間軸を移動すれば、その土地を領有していた国家はいくつも存在します。たとえば中国の黒龍江周辺は、中国・モンゴル・韓国・ロシア・日本が、それぞれ領有していた歴史を持っています。この土地はいったい、「もともと」はどの国の領土なのでしょうか?明確なのは現在の状態だけです。すなわち、黒竜江(アムール川)の西側を中国が実行支配し、東側をロシアが支配しています。それらの土地を、中国とロシアはそれぞれ、自国の領土と呼んでいます。

それぞれの国の国民が歴史を振り返り、もっとも領土が広かった時代、一度でも領有した土地を、「もともと我国の領土」と主張したらどうなるでしょうか。もともとの領土を回復するのは我々の「権利」であり、「1ミリも妥協しない」と主張したらどうなるでしょうか。武力によって再び地図の色を塗り替える以外に解決の手段はありません。しかし戦争で領土を取り戻す事は、21世紀に相応しい手段とはいえません。特に、尖閣諸島のような無人島、北方領土のような人の居住に適さない環境の領土については、根津氏が指摘されるように、国民の利益を中心に考えるべきではないかと考えます。

根津氏はコメント欄で、無駄な議論を避けるためか、金銭的利益以外に面子のようなものを含めておられますが、私はもっとストレートに、政府は経済合理性を中心に判断すればよいと考えます。北方領土をギブアップしてサハリンの天然ガス採掘権をもらうとか、尖閣諸島を共同統治にして海底油田の共同開発をすぐに始めるとか。どんなにすごい海底資源があっても、領有問題でもめている間は、日本だけで海底資源の採掘はおろか、島周辺での漁もままならない状態が続きます。これらの領土を日本が取り戻す困難さや、争う事によるデメリットと、妥協する事により得る経済的メリットを国民に説明して、説得するのが本来の政治家の仕事であろうと考えています。

ところで、尖閣諸島の領有に関して、興味深い情報があります。尖閣諸島を日本へ編入したのは、wikiによれば、
1885年以降、現地調査を何度も行った結果、無人島であり、中国・清朝の支配下にもないと確認
1895年、日本の領土に編入することを閣議決定
とあります。

編入したすぐ後の1900年5月に、尖閣列島の名付け親であると思われる沖縄師範学校の黒岩恒氏が、島の探検に行きました。その時に製作した島の地図を見ると、黒岩氏はこの島に、「釣魚嶼」という中国名を用いています。この島は日本人だけでなく、琉球人にとっても、馴染みのない島だったようです。つまり、この島は日本人よりも、琉球人よりも先に、中国人が見つけて名前を付けていたという事です。

*)本記事は、11月29日にアゴラへ投稿したものです。

1 comment - What do you think?  Posted by bobby - 2010/12/18 at 11:27

Categories: 1.政治・経済   Tags:

尖閣諸島をどうするべきか

アゴラに投稿したもともと我々の領土という愚のコメント欄で、尖閣諸島問題の経済面について述べた内容を、こちらのブログにも残しておきます。

結論から言うと、日本が名実ともに実効支配できている間に、海底資源のプレミアをつけて中国へ売り切るのが得策と考えます。仮に将来、政府の多大な努力の結果として尖閣諸島を完全支配できたとしても、メリットを受けるのは少数の漁民と、一部の石油関連企業だけであり、大多数の国民は経済的メリットを受けません。逆に中国へ売り切る事で、島の租借料や海上警備に投じている税金を節約できるだけでなく、漁業資源や海底資源を中国から買う事ができ、都市部の大多数の国民は経済的なメリットを得る事ができます。

1)居住の問題:

尖閣諸島や(仮に返還された場合に)北方領土のような、経済活動における収支がマイナスになる事が明白な場所に、日本人が恒久的な集落や好況インフラを構築しその為に貴重な税金を投じるのは愚かと言えます。

2)漁業資源の問題:

ロシアと中国の漁民の人件費が日本よりかなり低いのは明白です。都市部にすむ大多数の日本国民にとって、日本の漁民から高い魚を買うより、安い魚を中国とロシアから輸入する方が経済的メリットが高いのも明白です。これは、現在議論されているTPPの農業問題と同じです。詳しくは、藤沢氏の「農業と安全保障に関する私見」を参照下さい。

3)海底資源の問題:

油田の開発は高リスクの商売です。商業的に成功する油田になるかどうかは、掘ってみるまで不明です。仮に大規模な油田があっても、石油は世界的な市場価格がありますから、価格面において、国産石油の有利性はありません。逆に、石油の市場価格が下がった時は、国産石油は税金で補助を要するリスクもり、「納税者兼消費者」にとっては、必要に応じて中国から買う方が低コストかつ低リスクであるといえます。

4)妥協案:

経済的に考えた場合、尖閣諸島は共同統治案より、売り切り案の方が、国民が得る利益が高いと良いと考えます。推定される海底資源をプレミアにして、なるべく高く売りましょう。つまり中国は名を取り、日本は実を取ります。その上で、中国から石油や安価な買えば、「一粒で2度美味しい」状態になります。

現在の日本国憲法を改正しない限り、誰が首相になろうとも、日本政府の弱腰外交を根本的に変える事はできません。この状況で中国が尖閣諸島に軍隊を送り込んで、短期間で実行支配体制を構築すれば、日本政府は手も足もでなくなります。米国に泣きついても、たかが離島の為に、戦争覚悟で日本の為に実力行使を行うとは思えません。つまり竹島の二の舞です。そうなってから交渉をしようとしても鼻で笑われるのがオチです。交渉を始めるなら今のうちです。

10 comments - What do you think?  Posted by bobby - 2010/12/04 at 21:01

Categories: 1.政治・経済   Tags: , ,

<スポンサーリンク>